(部屋のチャイム音:ピンポーン→扉の開く音:ガチャッ)
おー、ただいまー。今帰った。
……って、ちょ、待てよ。どうした? 顔が固まってるって。俺、なんか変なこと言ったか?
え、「ただいまー」ってコレ? ははは、愛する妻の元へ帰る夫って設定で、一回「ただいまー」って言ってみたかったんだよな。
どう? ビックリした?
なんだよ、そんな驚くことでもないだろ? ま、彼女の家に遊びに来るのに「ただいま」はまだ早いってか。悪い、悪い。
てかさ、今のお前、なかなかいい反応してたぞ。
もっといじわるして、お前の反応を見て楽しみたくなるーって感じの顔……って、イッテ! いきなり叩くことないだろ? はいはい、おふざけが過ぎました。俺が悪かったですよ。
あぁー、にしても、最近仕事で残業続きだったから疲れたわ。
……でもさ、今日は久しぶりにお前の部屋に行くんだって思ったら、メチャクチャ仕事頑張れた。お前に早く会えるーって思ったら、ビックリするくらい仕事はかどったのもホントの話。
……で、俺たちこうやって会うの、いつぶりだっけ?
連絡は毎日してたとはいえ……ごめんな、なかなか会えなくて。寂しくなかったか?
(チュッ)
俺は……寂しかったよ。お前にメチャクチャ会いたかった。だからごめん……先にちょっとだけ抱きしめさせて。
(ディープキス)
……あ、久しぶりにお前の顔見たら、なんか抑えられないんだけど……でも、久しぶりに会えたんだから、もっといろんな話したいよな。
っとその前に、今日営業で外回りしてたから汗かいた。シャワー貸して。
(シャワー音)
――ふー、すっきりした。シャワー浴びたらなんか腹減ったな……ん?
おい、スゲーいい匂い。もしかして、お前、晩飯作ってくれてんの?
これ、俺の好きなオムライスじゃないかよ……! なんだよ、お前、俺の好物覚えててくれたわけ? マジ嬉しい!
ん、お前、顔が赤いぞ……どうした?
お、おい、ちょっと待て。せっかくお前が作ってくれてるのに、今から外食行こうだなんて。行くわけないだろ!
あ、そっか、悪い。俺、ちょっと嬉しくてはしゃぎ過ぎたかも。引いたか?
お前が俺のために料理作ってくれてるって思ったら、ちょっとヤバいくらい感動した。
……なんて言っていいか、俺のために晩飯作ってくれるの、マジで嬉しい。ありがとう。
(チュッ)
さて、俺もなんか手伝うわ。お前も仕事で疲れてんだから。お前にばかりやらせるわけにかいかないし。
じゃあ、この皿とコップ、テーブルに並べておけばいいか? ……いいって、俺にも手伝わせろよ。俺だって、ちょっとは役に立つんだぜ。
ふー食った食った。
付き合って1年経つけど、お前の手料理って初めて食べたかも。お前、すげー料理うまいんだな。
は? お世辞なんかじゃないって。俺の腹も心も満たされたって感じ。お前が作ってくれた料理のおかげで、仕事の疲れがふっとんだ。
……はは、お前、また顔赤い。てか、スゲー嬉しそうな顔してる。俺、お前のその顔……好きだ。
(チュッ)
あ、そうだそうだ。俺さ、お前に渡したいもんがあるんだった。
えっと……あぁ、あった。コレコレ。
はい、どうぞ。
何これって、見ればわかるだろ? プレゼントだよ。
いいから、とりあえず開けてみて。
……どう? 気に入った?
このネックレスさ、お前に似合いそうだと思ったから。もし、気に入ったなら身に着けて欲しいとなーと思って、思い切って買った。言っとくけど、これ買うときメチャクチャ緊張したんだからな。
え、なんでプレゼントって……
あのなー、決まってるだろ。今日は、俺たちが付き合って1年目の記念日。だから……お前にプレゼントしたって思ってさ。記念日に彼女にプレゼントを贈るのは当然だろう?
は、そりゃ……お前と付き合った日くらい覚えてるよ。
確かに、俺たちの出会いは合コンだったかもしれねーけど……俺は、お前のことを軽く考えたことなんて一度もねーよ。
初めてお前のこと見たときから、俺はきっとこいつとずっと一緒に居るんだろうなーなんて漠然と感じてた。だから……合コンの後に、勇気を振り絞ってお前の連絡先を聞いたんだよ。
とか言えばかっこよく聞こえるけど、実際は俺の一目惚れだったってわけなんだけどな。それは認める。
だから……俺とお前が付き合った日は、俺にとったらメチャクチャ特別な日だってわけ。分かってくれた?
はは、お前顔が真っ赤。……今日のお前、マジでかわいいし。
ほら、それかして。俺が着けてあげる。
はい、後ろ向いて。あー……ちょっと髪が邪魔だな。髪、持って。首筋……出して。
うーん、もっと髪かき上げて。じゃなきゃネックレスが着けられない。
そうそう、いつ見ても綺麗なうなじ、なんてな……首元くすぐったかったらごめん。
あ、えっと、そうか。こうして、と。
――よし、着けられた。いいよ、こっち向いて。
……っ、うん、いいね。すげー似合ってる。……綺麗だよ。
え、なんだよ。改まって。
そんなしおらしく「ありがとう」……なんて言われたら、こっちのほうが照れるって。
なあ、それよりもっと近くでお前の姿よく見せて。
うん、そう、もっと。俺の傍に寄って。
(キス)
はは、ふいうちだって? お前、顔赤いぞ。どうせドキドキしてんだろ? ここまで心臓の音が聞こえてきそう。
……あ、逃げるなよ。俺が贈ったネックレスを着けてるお前の姿、もっとよく見たい。そう、もっとこっちおいで。
うん、やっぱりこのネックレス、お前にすげー似合ってる。かわいい。
(ディープキス)
ネックレスも良いけど……本当は、今度、ココに合うのをプレゼントしたいんだよな……。
そうココ、今度はお前の左手の薬指に合う指輪を贈るから……そしたら、俺と結婚して。
おわり