【女性向けボイス】犬のお兄ちゃん「同じ人間となって感じることができる。私は幸せ者ですね。」



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イラスト:ももも様

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台本

(玄関を開く)

おかえりなさい。
どうしたのですか? さっきから開いた口が塞がらないようですが…。
私は誰、と? この見慣れた耳と尻尾で分かりませんか?
そうそう、私の頭の上から、犬の耳、尻尾…足のつま先までじっくり見て下さい。気付きませんか?
貴方は私を毎日目にしています。今日も私に「行ってきます」と笑顔で声をかけてくれたではありませんか。
それにおはようの口付けも、おやすみの抱擁も私にいつもしてくれているし、それだけではありません。
昔はよく一緒に眠っていましたよ。私の体は温かく大きくて、貴方がまだ今よりも随分と小さかった時には私に乗り、駆けまわっていたことも覚えていないのですか?

そんなに怯えないで下さいな。
私は貴方に危害を加えるつもりはありませんよ。
貴方は私にとってとても大切なお方だ、傷付けるようなつもりも…不安にさせるような真似もしたくないのです。

今週一週間、貴方のご両親は確か…海外旅行に出かけるのでしたよね?
どうして知っているのって?
当たり前ではありませんか。私は貴方方家族と常にともに暮らしてきました。
貴方が生まれる前から、この家で、家族の一員として。

だから、何度も言わせないでください。
私は嘘などついていません、私は貴方の家族、レオンですよ。

私はただ貴方を傍で見守りたいと日々思っていました。
その願いが聞き届けられたのか、人間になれました…そう、私は貴方が幼い頃から大事にしてくださっていた、レオンです。
人間になった理由はいまいち分かりません。
……けれど、(女の子を抱き締める)
こうして自分から貴方を抱き締めることができてとても嬉しいのです。

どうですか? そろそろ信じてくれますか?
…(頬笑み)ありがとうございます。いつ元の姿に戻るかは分かりませんが、その日が訪れるまではこの人間の姿でよろしくお願いしますね。

(キッチンへと移動。洗い物をしている女の子)
ごちそうさまでした、と私は食べていませんが言わせてください。
家族一緒に手を合わせることに憧れていたので…。
食事時は貴方も含め家族全員とても美味しそうに食べていたのに、私は食べられず、一人先に別のご飯を食べていました。
今なら食べられるかもしれませんが…万が一体を壊してしまったら、私はそのまま死に直面してしまうかもしれない。
そう貴方が判断してくれなければ、そのままご飯を食べてしまっていたでしょう。
どうも私は浮かれすぎているようだ…ありがとうございました。

少しだけ、後ろから抱き締めてもいいですか?
貴方の温もりを何度でも感じたいのです。

(女の子を後ろから抱き締める)

私は今まで何度も夢を見てきました。
一度だけでいいんです、私も貴方と食卓を囲み、同じ料理を食べ美味しいと笑顔で頷きたかった。
貴方は毎日「ママ、今日もご飯美味しいね」と言っていたけれど、どんな風味なのか、どれだけお母さんの愛情が込められていたのか、私には味わうことができない。

こればかりは望んでもどうにもならないでしょうが、つい夢見てしまいます。貴方たちと同じ人間だったなら、私は貴方の兄として、本当の家族として傍で見守り続けられるのに、と…。

(微笑む)やはり貴方の体はとても暖かいですね。
貴方が私に口付けをしてくれる度に思っていました、貴方の体は温かく、愛に溢れていると。
その愛をこうして、同じ人間となって感じることができる。私は幸せ者ですね。(微笑む)

あの…もしよかったらなのですが私が犬の姿に戻るまでの間、一緒に眠ってはくれませんか?
昔よくともにお昼寝をしたように、私とまた……。

(微笑み)ありがとうございます。
私が人間になった理由は分かりません。ただ親切な神様が私の願いを聞き、特別に願いを叶えてくれたとするならば…。
両親が無事に帰ってきたら、その時私の「貴方を傍で見守りたい」という願いは完全に叶い、そうしたら私は元の犬の姿に戻ることでしょう。
それまでの間だけでいいですから…。

(寝室へ移動。ベッド上に二人で横になる)

私が犬の姿のままならばベッドはこんなにも窮屈ではないんでしょうね。
昔は一緒にベッドで横になっても、寝返りを何度も打てる余裕がありました。
けれど思ったより人間になった私は大きいので、…ちょっと狭いですね。(困惑気味の笑み)
もちろん貴方が大学に行っていた時、突然人間の姿になって少し戸惑ってしまいましたが…今は少しだけ、こんなにも身長が高い人間の姿へと変えてくれた神様に感謝したいです。

(女の子を正面から抱き締める)

貴方の体を覆い隠すように抱き締めることができる。
いつも貴方が私にしてくれていたように、今日は私の胸に貴方をおさめることができる。
体を起こして見てみてください。さきほどからずっと私の尻尾が大きく揺れ動いているでしょう?
私は今、とても嬉しいんです。

ただあと一つだけ…、毎日貴方が私にしてくれているように、おやすみのキスをしてもいいですか?
貴方のその柔らかい唇に触れ、おやすみなさいの合図を……(チュッ)

(微笑む)やはり私が人間になっても、貴方の唇の感触は変わらないようです。
貴方の唇はとても可愛らしい桃色をしている。
何度も…(チュッ)……(チュッ)…(チュッ)…啄むような…(チュッ)…キスを…(チュッ)…繰り返したくなってしまう。
けれどこれ以上はダメですね。
私と貴方は人間と犬だ。それに私は貴方を妹のように思っていますから…。

元の姿に戻ってもよろしくお願いしますね?
愛していますよ…おやすみ…なさい。



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