台本
せーんぱいっ!
珍しいですね、図書室で勉強なんて。
あ、もしかして…赤点とっちゃいました?
あはは、冗談ですよ。先輩が赤点なんて取るはずないですよね。
ん?僕ですか?
僕は毎日、放課後はここで読書をするんです。
この学校、図書室小さいじゃないですか。
しかも端っこにあるので、ほとんど人が来ないんです。
…まぁ、たまーに、いかがわしい思考の方々もいらっしゃるんですが、その時は笑顔でお引き取りをお願いしています。
今日もほら、僕たち以外、誰もいない。
…え?図書室の番人?
なんですかそれ。
放課後の図書室には番人がいて、少しでも物音を立てると呪われる?…へぇ。だから最近ここに来る人少なかったんですね。
…え、それ僕なんですか!?
うっわー…最悪。すごい恥ずかしい呼び方だし。
僕が付けたわけじゃないのに、僕が中二病みたいじゃないですか…
…やっと、笑ってくれましたね。
先輩、すごい顔してましたよ?眉間の皺、やばかったんですから。
…で、どうしたんですか?
僕でよければ、話、聞きますよ。
…うん。…え?…ああ、それで…
んー、生徒会長とは全然面識なかったんですか?
…あー、そうなんですね。
でも、一回一緒に花壇の水やりしたくらいで?
…え、あれ、順番制だったんですか…?
なんていうか…女子って怖いですね。
いやー、だって先輩、知らずに一緒に水やりしちゃったんでしょ?
それなのに、そこから派生して噂立てられて…挙句クラスの女子にシカトされるとか…
災難としか言いようがないですよ、ほんと…
…あ、ちょっと、泣かないでくださいっ(焦りながら)
…はぁ、もう仕方ないですね。
…よく頑張りました。よしよし(頭を撫で)
大丈夫ですよ。人の噂も七十五日って言うじゃないですか。
すぐに消えちゃいますよ。
先輩は、何も悪くないんだから…ね?
…先輩?
…寝ちゃってる。
そうだよね、急に心当たりのない噂のせいで周りの態度が変わって…一日気を張ってて疲れちゃったよね。
ここで僕にそれを話して、気が抜けちゃったのかな。
おつかれさま、先輩。
先輩のその他人を信用しすぎるとこ、だぁい好きだよ。
先輩はきっと、欠片も僕のことを疑ってないんだろうね。
ふふ…こんなに上手くいくとは思わなかった。
ねぇ、先輩。あの日僕が、楽しそうに二人で花に水やるの見て、どう思ったかわかる?
わかんないよね。先輩ってほんと、鈍感だから。
最初はゆっくり好きになってもらえたらって思ってたんだよ。でもあの瞬間、思ったんだ。
先輩には僕しかいないって、ちゃんと理解してもらわなきゃダメだって。
それからはちょっと大変だったよ。
女子のコミュニティー調べて、それとなく、先輩が生徒会長を狙ってることを伝えて。
この「それとなく」って言うのが結構難しくて。
後から辿っても、決して僕に結びつけちゃいけないし。
そんなことしながら、図書室の番人?にもならなきゃいけなかったし。
ネーミングはもっとどうにかして欲しかったけどね。
そうして図書室に人を寄せ付けないようにして、先輩が一人になりたい時に逃げ込むようにしたんだ。
僕のところにね。
んー、労働がきちんと結果に結びつくって気持ちいいなぁ。
まぁ、こんなこと、先輩が絡まなきゃしないんだけどね。
…あ、目覚めました?
先輩寝ちゃってたんですよー。
ふふ…いえ、寝顔可愛かったんで退屈しなかったです。
怒らないでくださいよー。
ほら、顔に痕ついてますよ?
もー、ノートに突っ伏して寝ちゃうから。
ほっぺに線がくっきりです。
あはは…たぶんすぐ消えますよ。
ほんと、先輩って可愛いですよね。
素直でまっすぐで…僕、先輩のそういうとこ大好きです。
ふふ…耳まで真っ赤。
…初めて会った時から、僕、先輩のこと狙ってるんですよ…?
…なんて(笑いながら)
今日は先輩、百面相ですね。
ほら、そろそろ帰りませんか?
…はい、先輩さえ宜しければ、一緒に。
よかった、じゃあ、行きましょう。
先輩のお家ってどの辺りなんですか?
あ、それなら結構近いですね。
送っていきますよ。
…遠慮、しないでください。
僕がしたいだけなんですから。
それに、えーっと…
明日…とか、その…僕、毎日図書室いるんで…
もし、つらい事とかあったら、来てくださいね。
役に立てることなんて少ないとは思いますが…
むしろ、話を聞く以外何もできないかもしれませんが…
それでも、少しでも先輩が楽になってくれるなら。
僕は何でもしたいんです。
…って、なんか恥ずかしいこと言っちゃいましたね。
でも、本心なんで、訂正はしません。
…あーあ、着いちゃいましたね、先輩の家。
もっと一緒に歩きたかったかな、とか思っちゃったりしてますけど。
これ以上僕が何か言うと、先輩熱出しちゃいそうだし(笑いながら)
じゃあ、先輩。今日はゆっくり休んでくださいね?
また、明日!バイバイ…(ドアが閉まる音)
…ねぇ、先輩?
もう逃がさないから。
溺れ死ぬくらい愛してあげるから。
ちゃんと僕のこと、好きになってくださいね?
じゃないと僕、もーっとひどいことしなきゃいけないよ。
僕のこと、愛してくださいね?
せーんぱい…