台本
あの、チョコレート好き? えっ、大好物! じゃぁ、これあげるよ。俺、甘い物あんまり好きじゃないから。
へぇー、これ有名店のなんだ。得意先に挨拶に寄ったら貰ったんだ。
そっか、ここのチョコ今、大人気で並ばないと買えないのか。そう言われると一粒一粒ていねいに仕上げてあるように見えてきた……
あっ、その大きさ一口で……
ふふふっ。……えっ、何が可笑しいのかって? あっ、いや……ホント、おいしそうに食べるなーって思って。ふふっ。……バカにしてるんじゃないって。あの……えっと……かわいいなぁ~と思って、つい。
先輩のことバカにしてー! じゃないだろう。俺は中途採用組だから仕事上じゃ後輩ってことになるけど、俺達おない年だし。そんな先輩だとか後輩だとか細かいことにこだわらず、仲良くしようよ。
ほらっ、そんなふくれっ面しないで。ねっ、チョコまだたくさんあるよ。
……俺、本当はキミに感謝してるだ。
俺、全然違う職種から転職してきて、マーケティングなんてしたことなかったからさ。最初、すっげー大変だったんだ。なんか入社した時には一流企業からきたすごいヤツって噂がたってて……仕事でわからないことがあっても聞ける雰囲気じゃなくて、ホントどうしていいかわかんなくて、出社拒否寸前だったんだ。
そしたら、ある日「あっ、わんないことがあったら遠慮なく聞いてね。新人くん。」って女の人が声かけてきてくれて……それで、なんか肩の力がぬけて……それから、わからないことを周りに聞けるようになったんだ。あの時、キミが声かけてくれなかったら俺この会社、辞めてたかもな……あっ、そんな深刻な顔しないで、今の話、聞かなかったことにして。
じゃ、おしゃべりはこのくらいにして、そろそろ仕事にもどろうかな。
……ねぇ、今夜仕事が終わってから何か予定ある?
そっか……その……
友達が雰囲気のいいイタリアンの店やってて、ずっと遊びに来いって誘われてるんだけど、一人じゃ行きづらいくて……
今まで仕事のやり方とか顧客についていろいろ教えてもらったし、いつもお世話になってるお礼に……
その……よかったら今夜その店で食事でもどうかな?。
よしっ!!
あっ、びっくりした? つい、嬉しくて大きな声が……いや、なんでもない。
それじゃ、7時半に予約いれておくから。また後で……ね。
どう? この店、気に入った? 大人の隠れ家って雰囲気で落ち着くでしょ。
それじゃ、今週もお疲れ様。かんぱーい。くーっ、仕事帰りの一杯目は、うまいよね。この為に仕事頑張ってるんじゃないかなって思うよ。
あれっ、さっきからニヤニヤしてどうしたの?
えっ、俺、会社にいる時とそんなに雰囲気が違う? じゃーっ、会社での俺ってどんなイメージなの?
優等生タイプのエリート……いつも笑顔だけど本心がみえない……えっ、俺もしかしてディスられてる? なんかへこむなー。まぁ、言ってることは間違いじゃないかも。
俺、小学校からずっと学級委員だったからな。会社でもミスしないようにって気をはってるところはあるかな~。俺、実は人にミス指摘されるのスゲー嫌いなの。プライド高いから。
キミといると、自分の気持ちに正直になれるんだよなぁ~。素の自分が出せるって感じ。自分でも不思議なんだけど……なんか顔が熱いな……あー、なんか俺すこし酔いがまわってきたのかな……食事が終わったら酔い覚ましに少し散歩していかない。近くに夜景が見える公園があるんだ。
ねぇ、ここの夜景きれいでしょ。俺、仕事で嫌なことがあると一人でここにくるんだ。ここに人をつれてきたの初めてだな。
キミは俺にとって特別な存在なのかな。俺、やっぱり酔ってるのかな。いきなりこんなこと言われて迷惑じゃない?
そっか、そう言ってくれるとうれしいな。
あっ、あそこが俺達の働いているビルだ。どれって……ほら、あれだよ、あれ。もう少しこっちにきて。ほら、あれ。
……キミ、思ったより痩せてるんだね。こんな風に後ろから抱きしめられるの嫌い?
よかった……
ねぇ、今だれか付き合っている人いる? だったら……その、俺と……。
俺と付き合ってみない? 俺達きっとうまくいくと思うよ。
なんでそう思うかって聞かれても……俺だったらキミのちょっと天然なところをフォローできるかなぁって……もう、冗談だって、暴れるな。こらっ。
ねぇ、こっちを向いて。君の顔が見たいんだ。
キミの明るさに俺がどれだけ癒されてるか気づいてないだろう。うつむいてないで顔を上げてよ。
俺だって恥ずかしいよ。俺の心臓がドキドキしてるのキミも感じてるよね。
じゃぁ、そのままでいいからさっきの答えきかせてよ。
……そんなに強く抱きしめられると痛いって、だってうれしくてつい力が。
ねぇ、顔を上げて見せてよ。お願い……
ふふっ、やっと顔を見せてくれたね……(ちゅっ)。
これからずっとこうしていられるなんて夢みたいだ……(ちゅっ)。
えっ、今日あげたチョコレート買ったんでしょうって、気が付いてたの! そう、キミの気をひきたくて……1時間並んで買ってきた……
ふふっ、気が付いてたのか……これからはいつでも買ってきてあげるからね(ちゅっ)。