台本
おはよ、先輩。
なんですか、その顔。
朝からお化けでも見ちゃいましたか。
違う?
特に表情を変えたつもりはないって、まあ先輩がそう言うなら、それでいいですよ。
それより先輩、どうしてこんな朝から学校に?
なに、聞こえない。
読みたい本があったから来たって?
先輩、それ、無理がありますよ。
昨日だって三冊借りて帰っていたじゃないですか。
まさかあの分厚い三冊、もう読み終わったなんて言わないですよね。
そんなに膨れないでくださいよ。
先輩は睨んだって、全然怖い顔にならないんだから。
怖いどころか、可愛い。
はは。今度は顔が真っ赤だ。
先輩の表情は忙しいですね。
ねえ、先輩。
本当はどうしてこんなに早くから図書館に来たんですか?
え? なに? ちゃんと言ってくださいよ。
俯かないで、こっち見て。
今日の当番が俺だって、先輩、知ってたでしょ。
俺のクラスメイトから聞いたでしょ?
ああ、やっぱり何も気づいてなかったんですね。
あいつに今日の当番が俺だって先輩に伝えさせたのは、俺なんだ。
そうすればきっと、先輩は俺の為に朝早くから登校してくれるだろうって思ったんだ。
違うの?
俺はね、先輩と会えたら嬉しいなって思って、今日来たんだよ。
ーー俺の為に今日来たんだね。
先輩、嬉しいよ、俺。
そんなに恥ずかしがらないで。
もっと近くに来て。
俺の目を見て。
先輩に触れてもいい?
先輩の耳はとても小さくて可愛いね。
ほっぺたは、なんだか熱くなってる。
首は白くて細くて綺麗だ。
肩も小さいね。
そんなに固くならないで。
俺、怖い?
うん、怖くないでしょ。
手、握ってもいい?
先輩。
指ちゃんと絡めて。
もっと強く。
もうすぐ、連休じゃないですか。
先輩に会えなくなるって思ったら、俺、寂しいよ。
たった数日じゃないって、その数日が寂しいんだよ、俺は。
だからね、先輩、俺は今日、先輩に言いたいことがあるんだ。
先輩。
俺は、先輩が好きです。
入学してすぐの頃、先輩とこの図書館で会った時、多分一目惚れだった。
先輩が勧めてくれた本は全部読んだよ。
俺の勧めた本も読んでくれたね。
先輩と感想を言い合っているうちに、もっと好きになっていったんだ。
ああ、この人といると落ち着くなあって。
楽しいなあって。
先輩と会うたび、すごく、ドキドキしていた。
図書館に来るのが楽しみになったのは、先輩と話せるからなんだ。
もっと先輩を知りたい。
もっと先輩と一緒にいたい。
もっと先輩に触れていたい。
俺と付き合ってくれませんか?
ーー。
聞こえなかった。もう一度言って?
俺のことが、好き?
先輩は本当に可愛いなあ。
そんな真っ赤になって言われたら、襲いたくなっちゃうよ。
わあ、怒るなって。
冗談だよ、冗談。
ここ図書館だよ?
そんな事、いくら俺だってしないよ。
なに? 俺だから本当にしかねないって?
ひどいなあ、俺の事なんだと思ってるの。
あ、もしかして先輩、期待しちゃったりしたんだ?
ごめんごめん、からかいすぎたね。
ねえ、休みはどこに遊びに行きたい?
遊園地? 映画?
……え?
俺と一緒ならどこでもいい?
先輩、俺も、先輩と一緒にいられるなら、それだけで幸せだよ。
一緒に色んなところに行こう。
こうして手を繋いで歩くところを想像して。
なんだか、楽しそうだろ。
誰かに見られるかもって、先輩、何言ってるの。
誰に見られたって構わないだろ。
からかわれるの、嫌?
もし何か言われたら、ちゃんと言ってやって。
俺たち、付き合ってるんだって。
ねえ、明日から一緒に学校に来ようよ。
家近いし、迎えに行くよ。
え?
俺は寝坊しそうだから、先輩が迎えに行くって?
なんだよ、それ。
確かにいつもギリギリに登校してるけど、ちゃんと起きてるよ。
家でダラダラしてるだけ。
どんだけ俺の事残念な奴だって思ってるわけ?
もう、笑うなよ。
まあ、いいや。
先輩が俺の事迎えに来て。
それでもし俺が寝てたら、ちゃんと俺の部屋まで起こしに来てね。
ああ、これはいい案だね。
先輩が起こしてくれるなら、朝寝坊するのもいいや。
どうやって起こしてくれるの?
布団剥がして無理やり叩き起こす?
こわいなあ、もう!
そんな乱暴な事しないでよ。
キス、してくれたら、ちゃんと起きるから。
ねえ、してくれるでしょ?
どんな風にしてくれてもいいよ。
先輩がしたいようにどうぞ。
はは、先輩はからかい甲斐があるね。
そんなところも、大好きだよ。
ねえ。
先輩、今、抱きしめてもいい?
ーー。
先輩の体は本当に小さいなあ。
優しくする。
俺、先輩のこと、大事にするよ。
これからいっぱい先輩の事を教えて。
ああ、残念。
委員が集まる時間だ。
お昼休み、俺は図書館に来るね。
じゃあ、また後で。
なに?
え、寂しい?
先輩、このあと、お昼休みに会えるだろ。
ねえ、その手離して、行かないと俺、怒られちゃうだろ。
ーーじゃあ、キスしよう。
それなら寂しくないだろ。
離れている間も俺の事ずっと考えてしまう。
目、瞑って。
ああ、先輩のまつ毛ってこんなに長かったんだね。
こんなに先輩の顔が近いのは初めてだよ。
先輩、大好きだよ(リップ音)
目、開けていいよ。
俺、本当に行くね。
キスをねだる先輩の顔、最高に可愛かった。
じゃあ、また後でね!